反弾圧のたたかい

第48回公判報告

齊藤さん検察側反対質問・小黒さん弁護側主質問

挑発・品性のない悪辣な質問を繰り返す検察官に”怒”

 2006年6月1日、「えん罪・JR浦和電車区事件」第48回公判が行われました。
今回の公判は、前回に引き続いて行われた齊藤さんに対する検察側反対質問・弁護側最終質問、裁判所側による質問が行われ、齊藤さんへの被告人質問は終了しました。
検察側は、齊藤さんに対し挑発的な質問を繰り返したり、侮辱するような質問を行うなど、品性に欠けた質問を行いました。
このことは、まさにこの間の被告人質問によって、検察側が描こうとしていたストーリーが崩れ去った結果を示すものであり、混乱状況を表したものだといえます。
その後、7名の最終ランナーとなる小黒さんに対する弁護側主質問が1時間程度行われ、第48回公判は終了しました。
小黒さんは、初めて証言台に立つという緊張した面持ちにもかかわらず、弁護士の質問に対して終始落ち着いて対応しました。
しかし、7名の被告人質問が始まったのは、2004年10月13日の第24回公判からであり、それ以降、1年7ヶ月が経過して小黒さんへの被告人質問がやっと始まったのです。

事実をねじ曲げようとする検察側質問

 齊藤さんへの質問は、とくに逮捕当時に作成させられた「供述調書」について中心的に行われました。
齊藤さんは不祥事により会社側からの退職勧奨を受けたものの、不祥事の責任を感じて自ら退職し、逮捕当時は臨床検査技師の資格を得るために専門学校へ通学し、あらたな道を進んでいたのです。
その際に「組合は助けてくれなかった」と、JR東労組に対して、反感を抱いていたのです。
そのような心理状態の中で、、「早く外に出て、専門学校に戻りたい」「(退職時に)JR東労組は何もしてくれなかったのだから、迷惑がかかっても仕方がない」という思いも強く、取調官の脅しやイヤガラセにより、記憶にない部分までも「あったように」供述させられ、警察官・検察官の意のままの供述調書を作成してしまったのです。
しかし、齊藤さんは、逮捕から数日経過した頃、異常な取調べに疑問を持ち始めました。それは、「事件」のストーリーはすでにできあがっており、その「警察ストーリー」を押しつけ、確認させるための取調べであると感じたのです。
ですから、JR東労組に対する誤解を解き、さらに自分が強要などは行っていないことを自覚し、これまで作成させられた供述調書の訂正を求めたのです。しかし、取調官はこれまで以上のイヤガラセや脅迫的な言動で内容にかかわる部分の訂正を拒否し、「言葉じり」のみの訂正に止めてしまったのです。これらの事実をこの間の弁護側による被告人質問で明らかにしてきました。
これに対し、検察側は、「供述調書は任意であり、正確なものである」と主張し、取調官によるイヤガラセや脅迫まがいの言動などの事実について一切無視し、隠蔽しようとしています。検察側にとってみれば、そのようにしなければ「事件」をつくりあげることができないからです。
また、検察側質問は、一つの質問が異常に長く、誰が聞いていても質問の主旨が分からなくなるほどのものであり、裁判長からも「端的にして下さい」「まとめて下さい」「全部聞くんですか」など、数多くの注意を受けていました。このことは、齊藤さんの被告人質問によって、不当・異常な取調べを行ったことが明らかになったことへの混乱と、それを覆すことができないからに他なりません。

意図を持ってつくられた供述調書!
「1回参加」が「頻繁」に!?

 検察側はその後も、供述調書の記載についてしつこく質問を繰り返しました。
被告人となっている梁次さん、山田さん、上原さん、大澗さんの名前が供述調書に記載されていることについて質問が行われました。齊藤さんは「取調官から、○○がいたんじゃないか」と言われたので記憶にはなかったが、「はい」と答えただけであることを明らかにしました。
さらには、取調官の質問で「梁次は専従役員だが、職場に頻繁に来ていたのではないか」と質問され、「一回くらい」と答えたものが、供述調書では「頻繁に顔を出している」と作成されていることも明らかにされました。このように、取調官が自らの意図にもとづき「事件」を仕立て上げるために、『1回=頻繁に』とねつ造したことも明らかになりました。
まさに、取調室のような密室でえん罪事件はつくられるということが浮き彫りになり、取調べの異常性・不当性が明確になりました。

検察側の混乱ぶりを自ら明らかにする
「主旨がわからない・挑発的な」異常な質問!

 齊藤さんは現在、不当逮捕の結果として、やむなく臨床検査技師の夢をあきらめ、JR東労組の書記として奮闘しています。
検察側は、齊藤さんが東労組との雇用関係があるために当時の供述調書を覆そうとしていると立証しようとしていました。
以下は、質問の要約です。

検察官 → 平成15年4月から、JR東労組の書記として雇用され、組合員になっている関係があるから、記憶にないと供述したのではないですか。
齊 藤 → 違います。
検察官 → 保釈後に専門学校へは通っていますか。
齊 藤 → 行っていません。
検察官 → 専門学校を辞めたのは、保釈後、公判があるからではなく、月曜から金曜日まで、フルタイムで東労組の書記として働くので、行けなくなったのではないですか。
齊 藤 → 違います。
検察官 → 平成15年4月1日に雇用され、毎月給料をもらってますね。
齊 藤 → はい。
検察官 → 学校を優先させたいといえば、そうできたのか。
齊 藤 → そうだと思うが、実際には公判があるので、通えなかったと思う。
検察官 → 学校を優先させたとしても、給料はもらうつもりだったんでしょ。

 このように、検察側は反対質問が功を奏さず、思惑が通らなくなったことにより、「事件」とは全く関係のない、悪辣な、そして異常な質問を行いました。
この質問に対して、すぐに弁護側から「異議!検察官の質問は立証趣旨が不明であるばかりではなく、異常なものである」と異議申し立てがあり、同時に裁判長からも「質問を変えて下さい。むやみに挑発する質問は行わないように!」と厳しく注意されました。
検察側は、主旨がわからない長い質問・挑発的な質問・品性が問われるような異常な質問を繰り返しましたが、齊藤さんは、終始落ち着いて対応し、検察側によるたび重なる挑発や、悪辣な質問に対しても、真実を訴え、検察側の思惑を突き崩しました。
齊藤さんは7ヶ月におよぶ被告人質問になり、精神的にも厳しい状況にありましたが、正義と真実を明らかにし被告人質問を終えました。

小黒さん、被告人主質問はじまる!

 2004年10月13日の第24回公判から開始された被告人質問からすでに1年8ヶ月が経過しましたが、齊藤さんに対する被告人質問終了後、7人目となる小黒さんが証言台に立ち、約1時間にわたって被告人質問が行われました。
証言台に立った小黒さんは、緊張しつつも落ち着いた表情で質問に臨みました。また、質問に対する返答は力強く、まさに無実を証明する責任感に満ちあふれていました。
今回行われた弁護側主質問は、小黒さんがJR東日本に入社してからの状況や役員歴、また、2000年当時のY君の状況について述べ、質問は次回へ繰り越されました。

 次回の第49回公判(6月22日)も、小黒さんの被告人質問が行われます。
「えん罪・JR浦和電車区事件」の公判も大詰めを迎えています。
これまでの弁護側による証人尋問・被告人質問によって、検察側の立証は大きく崩れています。
私たちは、この「事件」発生当初から不当なものであることを訴えてきました。そして、そのことが証明される日が近くなってきました。

平和・人権・民主主義を守るためにも、「えん罪・JR浦和電車区事件」へのこれまで以上のご支援をよろしくお願いいたします。

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