反弾圧のたたかい

第44回公判報告
前回公判に引き続き「公判手続きの更新」を行いました!

「本件は強要罪を構成しない。東労組への攻撃が目的だ!」
弁護側意見陳述で強く訴える!!

 2006年3月17日、午前10時より「JR浦和電車区事件」第44回公判が開催されました。
今回の公判は、前回に引き続き、裁判官の交代に伴う「公判手続きの更新」として弁護側の意見陳述を行いました。
午前中は、弁護側より「総論」(事件の総体にわたる状況)として意見陳述を行い、取り巻く情勢や背景について訴えました。
午後からは、7名の担当弁護士よりそれぞれ「強要罪」にあたる行為がなかったこと、「共謀」の事実もないことを述べ、無罪を訴え「公判手続きの更新」は終了しました。
その後、休憩を取り、被告人質問が再開され、齊藤さんに対する検察側反対質問が行われました。
検察官は、齊藤さんに対して誘導するような質問を繰り返すなど、準備も不完全な状況が見て取れ、傍聴席からは失笑をかう状況でした。
しかし、公判の日程を2回半使い、「公判手続きの更新」が終了しましたが、次回公判で、また、あらたに裁判官の交替が告げられました。この裁判が始まって以来、実に6人目となる裁判官の交替を聞き、怒りと不満を感じずにはいられません。
裁判とは、証人尋問や被告人質問などの状況を直接裁判官の目で見て判断するという「直接主義」が大前提となります。しかし、「JR浦和電車区事件」では、裁判長を含めて、この3年間で6名もの裁判官が交替するという異常な事態となっています。JR東労組は、「事件」の真相や美世志会への支援を求めるとともに、公正・公平な裁判を求めて、世の中に広く訴えてきました。このような中での、無責任な人事異動を行う裁判所に対して、不安・不信は大きく募るばかりです。
私たちは、裁判の引き延ばしともいえる検察側の必要以上な反対質問日程の要求や、「更新手続き」による公判回数の延伸は、同時に美世志会7名に対する人権蹂躙も長期化することを意味しており、強く抗議するものです。今後、着実に完全無罪へ近づいている現状をさらに確実なものにするために、一歩一歩足もとを踏み固め、前進していきます。

弁護側意見陳述(総論)
異常な捜査・不当な取り調べは、えん罪の証明だ!

 弁護側意見陳述では、はじめに今回の「事件」について、取り巻く情勢や背景事情が述べられました。
意見陳述での事実経過は以下のとおりです。

  1. JR内における各労働組合の状況は、国鉄時代から非常に複雑な関係にあり、特に労働組合の分裂・合併などが頻繁であった。
    JR東労組が結成されてからも、少数派による脱退・新組合の結成があった。今回のきっかけとなったグリーンユニオンもJR東労組から反JR東労組の 新組合としてグリーンユニオンを1995年に 結成した。そして、そのグリーンユニオンは、JR東労組を「敵」 と規定し、「潜在組合員(スパイ的な組合 員)を東労組の中に育成し、時期が来たら内側から壊していく」という方針を掲げ、具体的にJR東労組の若手組合員へアプローチを行い、東労組からの引き抜きを行った事実がある。
  2. このような中で、発生したY君とグリーンユニオン役員とのキャンプは、グリーンユニオンからの組織介入に警戒していた時期であり事実を解明するためにY君に事情を聞いた。
  3. Y君は事情を聞く役員に対し、反JR東労組発言を繰り返し、脱退発言を行ったが、一時は謝罪を行い、分会はこれを受け入れ、事態は収束に向かった。しかし、その2週間後、Y君はこれまでの反省 ・謝罪・キャンプの事実経過は、すべて対立するグリーンユニオン幹部の指示で「嘘」をついていたこと が明らかにされた。
  4. 分会は困惑し、事情を聞いたが、Y君はこれまでついていた「嘘」 に対して反省せず、嘘をつくように脅かされていたと話をした。分組合員はY君に反省 を求め、説得行動を行ったが、一向に受け入 れず、「脱退します」との返答のみであった。分会はやむなくY君の意志を受け入れた。
  5. Y君は、その後、組合員との関係を悪化させる行動を取り、自らの意思によって「退職願」を提出し、JR東日本を退職した。

 以上のように、背景ならびに事実経過を陳述し、7名とも「強要罪」にあたる行為がなかったことを述べ、東労組からの「脱退」、JR東日本からの「退職」も、Y君の意志に基づいて行われたことを明らかにしてきました。

 さらには、警察・検察側の問題点についても明確に指摘しました。

  1. 強要罪とは比較的軽微(長期3年以下の懲役刑)なものであるにもかかわらず、7名の一斉の逮捕と、66箇所の大規模な捜索があり、押収品は事件と関連のないものまで含まれている。
  2. 7名に対し、取調べでは「有罪が確実だ」「争っていると10~20年出られない」などの脅迫的な言動があった。
  3. 本件はもともと強要罪を構成しないにもかかわらず、強制捜査の規 模と内容の大きさ、異常性も明らかであり、東労組への攻撃が目的であると 断ぜざるを得ない。労働組合に対する関心と期待が薄れつつある中で、平和運動を展開する東労組の排除が取り上げられ、虚構され、強制捜査が強行され、起訴されたのである。
  4. これらのことは、日本弁護士連合会による警視総監に対する「警告書」に明らかにされている。その中で、今回の広範にわたる捜査は、強要事件の立証のためではなく別目的である組合の組織解明や活動 状況の把握のために行われたといわざるを得ないと指摘している。
  5. また、ILOによる数回にわたる日本政府に対する「勧告」を出したことからも、世界の労働者がJR総連・JR東労組への弾圧を注目していることを踏まえ、公正な裁判を望む。

 このように、裁判所側の要旨の告知(裁判のあらすじ)では捉えきれなかった部分を補い、7名の無実を具体的に明らかにし、真実を公正・公平に審理するよう求めました。

弁護側意見陳述「直ちに無罪判決が言い渡されるべきである!」

 午後に入り、被告人7名それぞれの担当弁護士より「各人の行動は決して強要罪に該当するものは存在しない」ことを柱とした意見が述べられました。
前段では、JR内における労働組合活動とはどのようなものか、また、組合内での独特な用語についても誤解のないように説明を加えました。

  1. 組織破壊攻撃とは、対立する組合が自分の組織内を混乱させ、組合員の引き抜きなどを行うことである。
  2. Y君などがよく使う「つるし上げ」ということばは、抽象的であり、観念的なものであり、具体的にどのようなことかがあったのか不明確である。
  3. 7名一人ひとりの言動は、それぞれ各自の認識に基づいていることを理解してほしい。
  4. 7名のことと、JR東労組組織は分けて考えるべきである。

 と述べ、強要はもとより、脅迫・共謀を行っていない事実を訴えてきました。

 このように、弁護側より意見陳述が行われ、「公判手続きの更新」は終了しました。
その後、被告人質問が再開され、齊藤さんに対する検察側反対質問が行われました。
検察官は、「記憶にない」という齊藤さんに対し、再三同様の質問を繰り返したり、以前行った梁次さん・上原さんの被告人質問の返答を引き出しながら「梁次さん・上原さんはこのように供述していましたよ」など、共謀があったように描こうとしたり、挑発的な質問もありました。しかし、齊藤さんは、挑発には乗らず、的確に返答していました。検察官による重複質問に対しては、傍聴席からも失笑が漏れるほどでした。

 今回の公判において、新裁判長に対する「公判手続きの更新」が3日を使い終了しましたが、今回の公判で右陪席(裁判長の右側)の小池裁判官が交替すると伝えられました。
再三再四にわたる裁判官の交替には、不満と不信感が募るばかりです。公判の迅速化が求められている今日において、検察側質問の日数の多さや、裁判官交替に対する「更新手続き」によって、公判回数は非常に多くの日程が費やされています。この状況は、現行裁判制度に逆行していると言わざるを得ません。
これまでの公判で「えん罪」が明らかになってきている現実に立ち、7名の汚名を一刻も早く晴らし、完全無罪を確実にしていきます。
司法の反動化などの厳しい状況の中、「えん罪JR浦和電車区事件」を支援して下さる皆さんとともに、明るく、平和な社会を創造するためにこれからも全力で頑張ります。

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