2006年2月17日、午前10時より「JR浦和電車区事件」第43回公判が開催されました。
今回の公判は、前回に引き続き、裁判官の交代に伴う「公判手続きの更新」を行いました。
午前中は、裁判所側より、「被告人質問」についての要約が述べられました。そして、午後に入り、被告人7名がそれぞれ「無罪であること」さらには、これまでの公判で明らかになった検察側立証が崩れている現実など、これまでの公判のポイントについて、力強く意見陳述を行いました。
裁判所に対して、これまでの「公判のポイント」と「無罪」を力強く訴えました!
裁判所側の要旨の告知は「被告人質問」(第24回公判以降)を中心に行われました。
これまでの「被告人質問」では、検察側が立証しようとしている、検察側「冒頭陳述書」の内容について、それぞれの被告人から「事実と反するものである」として、検察側の数多くの主張を証拠品などを元に覆してきています。その一つ一つの事実を捉えてもらわなくてはなりませんが、これまで行われた裁判所側からの要旨の告知では、その点がはっきりとつかみ切れていないようでした。
裁判所側に対して、そのことを踏まえつつ、7名それぞれが、具体的な証拠により検察側の主張を覆してきた「被告人質問でのポイント」を意見陳述の中で訴えてきました。
7名は、新裁判長に対して、被告人質問の中での重要ポイントを具体的な事実から明らかにし、「無罪であること」を力強く訴えてきました。
そして、「裁判官の交代は、公正・公平な審理に支障があり、不安であること」さらに、「7名の逮捕の本質は、JR総連・JR東労組の平和の取り組みなどを否定するものであり、明らかに政治弾圧である」ことを強く訴えてきました。
被告人それぞれの意見は以下のとおりです。(要約)
<梁次さん>
2回にわたる裁判長の交代、5回目の裁判官の交代により、真実を見定め、公正な審理と判断ができるのかと疑念を持ちました。
被害者といわれるA君の検察側・弁護側尋問の落差を現在の裁判官は誰も見ておらず、被告人質問を行ってきた私たちの無実の叫び、態度・表情を新裁判長は見てはいません。是非、公正な裁判を行うように要請します。
私たちは、事件を仕立て上げられ、人権や平和な生活を奪われました。何故いまだに裁判にかけられているのか理解できません。「脱退・退職強要」もしていないし、「共謀」もしていません。過激派と仕立て上げられて、取調べも行われました。このことは、まさに、JR総連・JR東労組をつぶすための弾圧だといえます。
裁判が長引いているのは、被告人質問においても弁護側は一日で終了しますが、検察側の反対質問は二日を使うからだと思います。その内容は、同じ質問や関係のない質問を繰り返しており、前裁判長からは何度も注意を受けている状況でした。しかし、この裁判長の注意については公判調書には記載されていません。検察側尋問の内実を理解してほしいと思います。
私たちJR東労組は、当たり前の組合活動を行っており、平和・人権・民主主義のために努力しています。私たち無罪のものへの非道に対して、はっきりとした答えを出していただきたい。
<山田さん>
私たちが不当に逮捕されてから3年3ヶ月が経過し、裁判も43回を数えておりますが、あらためて無罪を訴えます。
取調べの中では、人権を無視した不当な暴言を数多く投げられました。その一部を紹介すれば、「黙っているのは極左集団のやり方だ」「(すでに事故で亡くなっている)弟さんに、両親の今後のことを頼むと謝れ」「今度、弟の写真を持ってきてやるから、その前で謝れ」「もう君はだめだ。会社もクビ。東労組にもいられない。両親と人生をやり直せ」「人でなし、バカ息子」「夜道を酔っぱらって、一人で歩くなよ」などの暴言からも、この事件の不当性が如実に表れています。
Y君が隠し録りした録音テープの反訳(公安警察作成)はねつ造されています。JR東労組は、仲間・お客様の安全を確保し、働きやすい環境を目指し、誰もが安心して暮らせる社会を目指して取り組んでいます。
私たちは、多くの市民の皆さんにも支えられていますし、多くの労働組合の仲間たちに支えられています。ILOの二度にわたる勧告や日本弁護士連合会による「警告書」も出されています。
事件の不当性と真実を見極め、公正な裁判を行うことを訴えます。
<上原さん>
更新手続きを行うのは、決して裁判の引き延ばしではありません。 検察側証人の検察側尋問と弁護側尋問での態度、表情、返答内容の大きな違い、そして、被告人質問の7名中6名の途中までを自分の目で見て判断していた、ポイントを押さえていた裁判長の交代に対して、公平・公正な審理ができるのかと大きな不安があります。検察側証人や私たち被告人の様子を見ていれば、証言や供述の真偽がつかめたはずだからです。
私は自分の見習いであるY君に対して、親心を持って接してきました。彼は子供の頃、父親から「人を見たら泥棒と思え」と教育されていたそうです。そのような教育から仲間や、先輩さえも信じることがなかったのだと感じました。そのような彼に対して、「人を信じることの大切さ」「仲間の素晴らしさ」を理解してもらうために話をしてきましたが、理解は得られませんでした。そして、何度も裏切られてきました。しかし、脱退や退職を強要したことはありません。
国鉄時代からの労働組合の結成、分裂などの歴史や、各労働組合の考え方の違いなどを含めた複雑な労働組合の状況もつかんでほしいと思います。
検察側の冒頭陳述書は、こじつけやねつ造によってつくられていることを被告人質問によって明らかにしてきました。私たちは無罪というより無実です。
私たちは、平和を求め、明るい社会を目指して取り組んでいます。
様々な背景などをしっかりと見て、公正・公平な裁判を求めます。
<斉藤さん>
裁判長の交代により、真実を見ることができるのかと不安を感じています。被害者といわれるY君の証言態度を見ていれば、真実かどうかは一目瞭然だからです。
私は、逮捕当時、すでにJR東日本を退職し、あらたな道を進んでいました。そして、JR東労組への不信感を持っていました。そして、妻のことなどいろいろと悩み、早くもとの生活に戻るために、スムーズに取調べに応じました。そして、その気持ちに便乗した警察官の脅し・誘導、イヤガラセなどによって事実と違う供述を行いました。
取調べの警察官は、3~4センチの厚さのファイル帳を机にたたきつけ、「甘いんだよ」などと怒鳴られました。また、耳元で「斉藤!斉藤!斉藤!」などと大きな声で怒鳴ったり、妻を尾行しているような話もありました。本当に恐怖を感じ、事実とは違う、警察の思い通りの供述をしてしまったのです。さらには、黙秘権の告知もなく、調書の訂正さえ拒否される状況もありました。このことをこれまでの被告人質問で明らかにしてきました。
私たちは、組合からの脱退や、退職について強要などしていません。
公判調書の裏側に隠れている真実をつかみ、真実を公正な目で見て審理するように訴えます。
<小黒さん>
これまでの42回にわたる公判に時間を積み重ねてきました。
当時の浦和電車区の明るい職場風土と箱根以西のJR職場の違いを見てほしいと思います。国鉄改革では、倒産した国鉄を立て直すために先輩たちが大変な苦労し、明るく、楽しく、一体感のある職場風土をつくってくれました。
証拠で提出されている録音テープの反訳書を聞いて分かるとおり、私たちは、脱退・退職などの強要はしていません。Y君の証言を聞いていて「事実とは全く違うじゃないか」と叫びたいほどでした。
また、取調べの時には「争っていれば10~20年出られない」などの脅しを受け、そうなれば「我が子は、22歳になるのか」と精神的に追いつめられました。私たちの無罪を訴える真剣さも理解してほしいと思います。
これから行われる、私の被告人質問の中で、無罪であることを必ず証明していきます。
<八ツ田さん>
私たちの「事件」では、事前の任意の取調べもなく、不自然で異常な広範にわたる捜索が強行されました。不当逮捕から、家族も、私以上に不安な暗い生活を余儀なくされています。
私は、国鉄時代に電車の運転士になり、お客様の安全を第一に考え、一生懸命に努力をしてきました。
「被告人質問」の中で、「実際には会議に出席していなくても、出席していた」などと立証しようとしている検察側のでたらめを証明してきました。
A君は、公安警察の熱心な説得によって「被害届」を出したに過ぎず、私たちは「強要罪」にあたるようなことは何もしていません。
また、当時のA君は、グリーンユニオン幹部の指示によって組合員に「ウソ」を繰り返していたことに対しても、指導員として深い愛情を持ち、説得してきました。
検察官からは、恣意的な挑発やこじつけ、揚げ足を取るような質問が繰り返されました。
新裁判長は、予断を持つことなく、公正・公平な審理をしていただくようにお願いします。
<大澗さん>
一切身に覚えのない強要罪に問われ、強制的に仲間と遮断され、孤独な生活を余儀なくされました。取調べの中では、「絶対に起訴する」ということばで脅され、また、「黙秘すると10年は出られない」など長期勾留もほのめかし、黙秘権も否定されてきました。
拘置所の入所時にも、過激派と扱われ、人権侵害も受けてきました。
保釈後も、パスポート取得での特別扱いがあり、社会的不利益を受けるなど、被告人としての重圧は想像を絶するものです。
検察官が主張するような、A君を脱退・退職に追い込んだという強要の事実もなく、共謀もしておらず、その事実は全くありません。
JR東労組は、「組合員と家族のために」を基調とする当たり前の労働運動を行っていることを踏まえていただきたい。
裁判長が、検察官が起訴した事案に対して、私たちの無罪を判決することは大変な勇気を必要とすると思いますが、7名の人生がかかっていることからも、誰もが納得のできる判決を訴えます。
このほかに、検察側立証を具体的に崩してきた内容も述べ、事実関係もあらたに裁判長へ訴えてきました。
また、この事件は、JR東労組をはじめとしたJR総連に対する政治弾圧であることを、捜査や取り調べの異常性を具体的な事実として訴えてきました。
7名の意見陳述を聞いている新裁判長は、大きく目を見張り、被告人の意見を真剣に聞き入れているようでした。
このように、7名がそれぞれが力強く、あらためて無罪を訴えて、被告人の意見陳述を終えました。
私たちJR東労組は、裁判官の交代に対して、司法に対する不安感は持ちつつも、これまでと同じく、無実を証明するために頑張っていきます。
多くの皆さんのご支援をよろしくお願いいたします。
次回の第44回公判(3月17日)では、弁護側の意見陳述が行われます。
今後の公判日程は、
第44回公判 3月17日(金)
第45回公判 4月21日(金)
第46回公判 5月12日(金)
第47回公判 6月 1日(木)
第48回公判 6月22日(木)
第49回公判 7月14日(金)
第50回公判 7月31日(月)
第51回公判 9月 8日(金)
第52回公判 9月28日(木)
第53回公判 10月26日(木)
第54回公判 11月16日(木)
第55回公判 12月21日(木)
いずれも午前10時より、104号法廷です。