齊藤さんへの取り調べはY君の供述と「被害届」を一方的に利用し行われた!
えん罪は「取調室でつくられる」その実態を明らかに!
11月25日「えん罪JR浦和電車区事件」第40回公判が行われ、前回に引き続き齊藤さんへの弁護側質問が行われました。
齊藤さんからは、逮捕された2002年11月1日から始まった公安警察による取り調べの実態が語られました。この中では「事件を仕立て上げるための取り調べであった」という事実が明らかにされ、また、恫喝や強要まがいの取り調べだったことも述べられました。
公安警察による取り調べは、事実を解明するために双方から事情を聞くというものではなく、Y君の供述と被害届のみを一方的に利用し行われたことが明らかになりました。さらには「公安警察ストーリー」を完成させるために齊藤さんへ恫喝を行い、恐怖心を煽りつつ取り調べが行われたという実態が明らかになりました。
JR東日本を退職していた齊藤さんにとって、あらたな道をスタートしていた中で、以前の組合問題での逮捕という事態はまさに、青天の霹靂だったのです。 「早く外に出て(釈放されて)、もとの生活に戻りたい」という齊藤さんの思いを利用し、警察官の思いのままの供述調書が作成された実態も明らかになりました。
被告人質問の特徴点は以下のとおりです。(要約)
「黙秘権がある」との告知をしないままの取調べ
弁護士 → 警視庁での取り調べの際、黙秘権があることを告げられたか。
齊 藤 →一切なかった。
本来ならば取り調べを行う際には必ず、「黙秘権がある」との告知が行われますが、取調官はその告知もせず、取り調べを開始するなど、被疑者(当時)の権利さえ無視する異常な取り調べの実態が明らかになりました。
公安警察ストーリーにそぐわないと恫喝を行う取調官
弁護士 → 取調官に「強要したのか」と聞かれ、「やっていない」と答えると、取調官はどのような態度になったか。
齊 藤 → 急に怒り出し、3~4センチ程あるA4版のファイル帳を振りかぶり、机に叩きつけ、「甘いんだよ!」などと顔を近づけて怒鳴った。
弁護士 → その時、どんな心境だったか。
齊 藤 → 取調室にいるだけで、今後どうなるかと不安と恐怖でいっぱいだったにもかわらず、怒鳴られたことで飛び上がる程怖かった。
弁護士 → 今後について、どのようなことを考えたか。
齊 藤 → 自分の記憶の通り話しても、信じてもらえないと思い、警察官のいうとおりに供述しようと考えた。
また、齊藤さんは「殴りかかってくるのではないか」と非常に恐怖したと赤裸々に述べ、警察官の意に添うように供述をしなければならないと強要が行われたような状況を明らかにしました。
Y君の供述を鵜呑みにし、真実の解明を放棄した公安警察官
弁護士 → 取調官に「強要したのか」と聞かれ、「やっていない」と答えると、取調官はどのような態度になったか。
齊 藤 → 急に怒り出し、3~4センチ程あるA4版のファイル帳を振りかぶり、机に叩きつけ、「甘いんだよ!」などと顔を近づけて怒鳴った。
弁護士 → その時、どんな心境だったか。
齊 藤 → 取調室にいるだけで、今後どうなるかと不安と恐怖でいっぱいだったにもかわらず、怒鳴られたことで飛び上がる程怖かった。
弁護士 → 今後について、どのようなことを考えたか。
齊 藤 → 自分の記憶の通り話しても、信じてもらえないと思い、警察官のいうとおりに供述しようと考えた。弁護士 → 事実関係について、Y君にかかわったのは誰かと聞かれどのように答えたのか。
齊 藤 → 名前が浮かんだのは山田君で、取調官から「他にはいなかったか」と聞かれ、大澗さんがいると答えた。
弁護士 → 次はどのような質問がされたのか。
齊 藤 → 「その他には誰がいたのか」と聞かれたが、思い浮かばなかったので黙っていたら、「梁次はいなかったか」と言われ、いたような気がすると答えた。そうすると「梁次もいたんだな」と強い口調で言われた。
弁護士 → 名前をいった3名はY君に強要していたのか。
齊 藤 → 他の人を含め、強要などしていない。
さらには、
弁護士 → 取調官から、最後に「当時の状況を図面に書いて見ろ」といわれ、図面を書いたようだがどのようなやり取りがあったのか。
齊 藤 → 自分の記憶にないことだったので、事実には反しても取調官の意に添うように図面を書いたら、「これでは取り囲んでいないじゃないか!」と突然大きな声で怒鳴られたので、取り囲んだように書き直した。
公安警察が仕立て上げようとする「上部機関(地本)にいる梁次の指示で行った犯行であり、梁次は主犯格」との構図を完成させようとしていた事実も明らかになりました。また、同様に様々な職場集会や会議の出席者についても被害者とされるY君のみの供述に基づいて誘導尋問が行われ、真実からかけ離れた供述調書ができあがったことも明らかにされました。まさに公安警察は、「事件」の真実を究明するのではなく、あらかじめ公安警察が描いたストーリーに沿うように、恫喝・強要を行ったといっても過言ではありません。
日本の歴史の中でも、数多くのえん罪事件がありますが、まさに「えん罪事件は取調室の中でつくられる」という事実を目の当たりにするものでした。
今回被告人になっている7名は、11月1日の逮捕から警視庁本部を含む、6つの警察署に別々に留置されました。齊藤さんは、警視庁本部に留置され、昼食・夕食とも警察官の監視の中、取調室で取り、食後の休憩さえも全くないという状況で取り調べは続行していたのです。
弁護士には「会うな!」、勾留裁判では「裁判官に余計なことはいうな!」
弁護士 → 11月2日の弁護士面会は行ったのか。
齊 藤 → 取調官に「組合の弁護士には会わない方がいい」と繰り返しいわれた。
弁護士 → 11月3日の裁判所での「勾留裁判」については何か言っていたか。
齊 藤 → 「裁判官は忙しいので、余計なことは言うな!」といわれた。
公安警察官は精神的にも追いつめるように、高圧的な態度で誘導尋問を繰り返しました。そのことはまさに逮捕以前にできあがっていた公安警察ストーリーを補完するだけのものでした。しかし、今回の法廷では齊藤さんが取調官の意のままの誘導によって供述した調書であることが明らかになり、警察が押収した証拠品によって真実が明らかにされ、当時の供述は取調官に仕立て上げられたということが明確になりました。
以上のように、齊藤さんはあらたな道を踏み出した矢先の出来事での恐怖・不安により、「取調官の意に添えば、早く釈放になる」と信じ、誘導のとおりに供述していたという当時の苦しい心情も明らかにされました。
しかし、それ以上に、被疑者に対する「黙秘権の告知」さえ行わずに、脅迫・強要による公安警察ストーリーどおりの供述調書をつくった事実が明らかになりました。
2002年11月1日の7名の組合員の逮捕から私たちが主張してきたように、この「事件」はまさに、公安警察によって仕立て上げられたえん罪事件であることがさらに明確になりました。
戦前・戦中の特高警察を彷彿とさせる取調べの実態が明らかになり、7名の完全無罪の道がより一層近くなったことを確信することができました。
これからも皆さんのより一層のご支援をお願いいたします。
次回、第41回公判(12月16日)は、弁護側質問の残った部分の質問、そして検察側反対質問が行われます。
これからもよろしくお願いいたします。