4月18日22時30分頃、両毛線491M運転士は桐生駅に1分遅着、1分遅れで発車、駅構内が徐行(45㎞/h)区間であることを失念し、転てつ器通過後速度を上げてしまい徐行速度を超過する事象が発生しました。会社はすぐにこの事象を「速報」で掲示しました。
高崎運輸区分会では、4月2日にも他区の乗務員が同場所で徐行違反が発生していたことや「速報」の記載に疑問を抱き、運転士分科会を中心に原因究明員会を開催して本人から状況を聴き、事実経過や背後要因について議論しました。その結果、「速報」の2点の大きな問題点が発覚しました。
1点目は、掲示の内容が当該乗務員の報告した内容と違うことです。会社の掲示内容は①交換列車が遅れていた、②区の速度超過対策である「クリップ」「徐行シート」を使用していなかった、③同区間で4月2日に発生した速度超過について業務訓練で内容を把握していた、④桐生駅発車時に車掌に添乗中の教育助役より速度が高いと指摘を受けたなどです。この掲示内容から読み取れるのは、運転士が区所で指導されている対策を怠ったから速度超過が発生した。ましてや、車掌室に添乗中の教育助役が指摘したにも関わらず速度を落とさなかったと、当該乗務員の責任があるとしか思えない内容です。
しかし、本人の聞き取りから明らかになったことは①自列車が遅れていた、②区の対策は指導されていない、③業務訓練は18日からで当該運転士はまだ受けていない、④徐行違反を指摘されたのは桐生駅から3駅過ぎた足利~富田間だったなど、「速報」で出された事実経過が当該乗務員の報告内容と違ことです。
運転士分科会は直ちに現場管理者へ訂正を求めましたが、すぐに訂正されませんでした。この文書は、現場からの報告に基づき支社で作成されているもので、メールで関係箇所に配信されています。したがって、虚偽の内容が現場で周知されているのです。分科会の再三の要請に対して、訂正された「第二報」が2カ月以上経ってから掲示されましたが、3日間で撤去され、他の職場には掲示もされませんでした。そして、内容にはまだ正確でない部分が残っています。
会社は、常に正しい報告、正しい業務と社員に徹底していますが、この掲示の内容を見れば、多くの虚偽があります。そして、職場で訂正を求めても直ぐに対応しませんでした。事象が発生した場合、会社が日頃言っているように、正確な状況が伝わらなかったら真の原因究明はできませんし、正しい対策はたてられません。今回の会社のやり方や姿勢では、原因究明はもちろん再発防止など出来るわけがありません。
2点目は、車掌室に添乗していた他区の教育助役が速度超過を認識したにもかかわらず、その時点で非常ブレーキを扱うこともせずに携帯電話で自区の当直に担当乗務員の所属を確認し、当直から確認の連絡がきてから、なんと当該駅から3駅目を過ぎてから、徐行速度違反したことを指摘したのです。
私たちの育んできた安全風土確立の柱は「危険を感じたら列車を止める」ことです。運転士は徐行を失念し、転てつ器の速度制限解除を確認して速度を上げてしまったのです。運転士が失念し徐行速度をオーバーしていることに気付いた時点で、速度違反していることを通告するか、非常ブレーキを扱うのが基本です。
しかし、速度違反に気付いたが危険を回避することよりも報告を優先するような体質になっていることは看過できない事態です。そこに見えるものは、「報告」と称した社員管理や処分、そして責任追及の体質です。かつてすぐに報告しなかったことを隠蔽・事故隠しと問題にして行われた「正しい報告、正しい業務」なるキャンペーンが安全よりも報告を優先する体質や風土を作り出しています。
徐行区間を失念した背後要因には、徐行区間が下り場内信号機から上り場内信号機までと構内全体になっていること、失念を防ぐためにホーム端に徐行信号機を設置していましたが、客扱いや発車、ポイント制限など一連の作業が混在したこと、自列車の遅延や雨でワイパーを気にしていたことなどがあり、徐行区間であることを失念しました。また、同事象が連続して発生していることから根本的対策が必要であることも議論してきました。分科会では、毎月定例で座談会を開催しています。その中でこの問題について組合員に明らかにしてきました。組合員からは「会社を信用できない」「正直者がバカを見る」「運転士の責任追及で終わりにするなど巧妙に仕組まれている」「会社は信頼できない」と不信感も出されています。
この間、徐行速度超過が発生時の対策として①徐行信号機にATS-P型の活用ができないのか、②徐行信号機を見やすいものに改良する③徐行区間が駅構内やポイント制限などが含まれている場合は制限解除地点にも徐行信号機を設置するなどの意見が出されましたが実現していません。
首都圏の運輸職場を中心に労務管理の強化、JR東労組排除の姿勢が現れています。管理強化・営利優先の経営体質が安全管理に反映されて行くことは、福知山線脱線事故のJR西日本や原発事故の東電が証明しています。
職場からの挑戦で、安全風土の確立と組合員や家族の命を守っていかなくてはなりません。いまこそ、私たちの真価が問われていると痛感しています。