松戸車掌区分会は、組合員132名中、青年部員が101名の非常に若い仲間で常磐線・成田線の安全輸送に日々奮闘しています。
この間、遅れを回復しようとして発生した福知山線事故を教訓に、乗務員職場の正しい安全とサービスの価値観を創り出すために、適切ではない1~2分の遅れでの「申し訳ございません」というお詫び放送について議論を重ねてきました。
会社は、列車遅延が発生して車内放送で苦情が寄せられた際、「最後にきちんと謝罪放送しましたか」と聞いてきます。放送していない場合、会社から責任追及とも言える事情聴取が行われたり、さらに支社のスキルアップ研修では「申し訳ございませんと、必ず添えてください」と、とにかく謝罪を強要する教育が行われています。これでは、自分の評価だけを気にして、苦情をもらわないためのお詫び放送や、応用が利かないマニュアル車掌しか育成されません。
したがって、分会として昨年11月から4回の職場集会を開催し、「お詫び放送はどうあるべきか」「何で、申し訳ございませんと放送をしているのか」について、議論を重ねてきました。すると若い組合員の多くは、「駅でやっていたから」「お詫びをしないと苦情がくるから」など、〝とりあえずは謝っておけば良い〟という感覚でした。
そして、1月の旗開きや2月の職場集会で「お客さまは、異常時に何を本当に求めているのか」について議論を重ね、分会として「やらされているお詫び放送ではなく、1歩進んだ〝ご理解とご協力に感謝する放送〟」を目指すために、「安全とサービスを考える検討委員会」を起ち上げました。その中で議論を行い、組合員が分かりやすい分会の放送文案を作成し、3月の職場集会で提起すると同時に、「自ら考えたサービスを実践していく決意」をメッセージにして全乗務員で取り組んで掲示板に張り出し、4月1日より全組合員で「ご理解とご協力に感謝する車内放送」をスタートさせてきました。
4月に入り、風規制や信号機故障などの異常時が発生しました。職場集会で、異常時に当たった乗務員から「申し訳ございませんと言わず、『ご協力をお願いします』と放送したが、特に問題はなかった」「毎回謝っているだけより、感謝や協力を求める方が良い」など、成果が現れています。
お客さまが求めていることは、謝罪放送ではなく、止まっているならきちんとした理由、遅れているなら誰もが納得できる理由を案内することです。そうすれば、必ず理解してくれます。さらに、代替輸送があるのか、運転再開の時期など、お客さまが判断できる案内をすれば、お客さま自身が判断し行動してくれるのです。実際、4月1日より車内放送を取り組んでから、苦情はありません。
さらに組合員からは、「風規制は分会案で良いと思うが、車両や信号機故障はJRに責任があるのだから、部内要因と部外要因を分けるべきではないか」などの声もあります。これは、会社から「何でもいいから謝りなさい」と言われ、無自覚にお詫び放送を繰り返していたことに対して、組合員自身の意識が変化し、自立した車掌を目指すために組合員自身がたたかっている証左だと言えます。
今後も、検証行動を繰り返しながら、さらに「安全とサービスを再確立し、自立した車掌」を目指し、奮闘していきます。
<ご理解とご協力に感謝する車内放送(分会案)>
●会社が考えるお詫び放送とは●
・お詫び放送をさせることで、苦情が来ないこと。それが、お客さまの顧客満足につながる
●私たち松戸車掌区分会が考えるお詫び放送とは●
・お詫び放送が顧客満足という会社の考えは、大きく勘違いしている
・私たちは、命を預かる仕事をしている。本当のサービスとは「お客さまを目的地まで安全に安心して送り届けること」である。そのために、「やらされているお詫び放送」ではなくて、1歩進んだ「ご協力を感謝する放送」を目指し、4月1日から具体的に実践していきます!
★基本は「ご理解とご協力に感謝する放送」★
・部内要因・部外要因を問わず、「申し訳ございません」を一切使わない
・最後は「ご迷惑をお掛けいたしました」で終えていく
・速度規制が発生した場合は、「安全を確保するために、速度を落として運転をいたします」というような感じで放送し、最後に感謝の言葉として「ありがとうございました」と放送して終える
■放送例■
発生時:「お客さまに、急病人発生についてご案内いたします。車内で具合の悪いお客さまがいらっしゃいます。これから救護いたしますので、しばらくお待ち下さい。お急ぎの所、ご迷惑をお掛けいたしますが、ご協力をお願いいたします」
発車後:「大変お待たせいたしました。具合の悪いお客さまを救護しておりましたため、○○駅を○○分遅れて運転しております。なお、お客さまにはご理解とご協力いただきまして、ありがとうございました」