4種踏切で乗用車と衝突2名死亡
私たち釜石線営業所分会運転士分科会は、秋の落ち葉による空転や滑走、冬は風雪などの環境変化への対応や動物との衝突など日夜自然とたたかいながら、安全輸送確立のために全組合員で取り組んでいます。また、乗務線区はローカル線のため第4種踏切(遮断機も警報機も無い)が多数あり、乗用車や住民の直前横断など踏切事故の危険を日々感じています。
昨年10月20日午前7時42分、山田線磯鶏~津軽石駅間の盆景踏切で列車と乗用車が衝突し、乗用車に乗っていた親子2名が死亡するという事故が発生しました。原因は、乗用車が一旦停止しないで踏切に進入したためです。運転士には過失がないとはいえ尊い命が失われました。
この踏切は、踏切の手前が盛り土になっているため見通しが悪く、列車と通行者双方が見えにくくなっています。さらに周辺は住宅が増えて踏切の歩行者や通行車両も増加し、特に朝の通勤時間帯に利用する車が多くなっています。この踏切では2006年にも乗用車と衝突し、1名の方が亡くなる事故が発生しています。
同じ事故を繰り返してはだめだ
分会では、2006年の事故発生以降も同踏切で乗用車が進入し非常ブレーキをかけたという声が多く上がっていました。そして、乗務員相互で同踏切への注意喚起を行っていました。しかし、列車に遅れが発生しないため、事象として報告しないこともありました。また、会社に対して、踏切周辺の環境も変わり交通量も増加して危険だという運転士の意見が多く、第1種踏切に整備するよう要求を出していました。しかし、運転士分科会として具体的な対策、問題点について、要求を実現するための運動と組織的な取り組みを進めることができていませんでした。
事故当日は私たち運転士分科会の定期総会の開催日であり、冒頭2名の尊い命を失ったことに対し黙祷を行いました。定期総会では「自動車を運転する人のモラルの欠如が原因ではないのか」「会社は踏切の対策として何をしてきたのか」「危険な箇所は徐行区間にしてもいいのではないか」「他の第4種踏切はどうするのか」「前回の事故からの対策は何か」「組合は何をしてきたのか」など、踏切の安全に対する発言が相次ぎました。組合員から二度にわたる踏切事故の原因究明と対策、安全風土再確立の取り組みが求められたのです。
原因究明委員会でできることから
分会では原因究明委員会を設置し、私たち運転士分科会は、発言を受けて翌日緊急職場集会を開催し、前回から今回の踏切事故までの事実経過と問題点について検討し、自分の命、仲間の命、乗客の命や踏切利用者の命を守っていくために、今後どのように取り組めばよいかを組合員と議論しました。運転士分科会では、運転士自らの判断で危険な踏切の通過時は速度を落として運転することを参加者全員で確認しました。また、同区間を担当する宮古派出所分会とも連携して取り組んでいくことを確認しました。
安全軽視が浮き彫りに
分会は、集会で出された要求や意見をもとに会社に「2件の死亡事故が発生したことを重く受け止めているのか」「抜本的な対策を行うまでどうするのか」などの改善を求めましたが、具体的な対策は示されず、会社の安全軽視の姿勢が浮き彫りになりました。そこで①抜本的な対策を行うまで踏切を一時使用停止とすること②車両進入禁止とすること③列車接近警報装置を利用して警報音を鳴動させられないかについて会社に申し入れると共に、会社の回答や議論内容を組合員に報告し、運転士自身の判断で危険な箇所は、速度を落として運転することを再度確認しました。
分科会は、地本運転士分科会と連携し、他の第4種踏切の実態調査と今後の在り方について議論を始めました。地本・支社間の安全経協の議論で第1種踏切にする方向で認識の一致をはかり、その後、支社は宮古市と協議し、同踏切を第1種踏切にすることが決定しました。
安全で働きがいある職場を創る
2006年に事故が発生したとき、しっかりと原因究明を行って対策を立てていたら、事故は未然に防げたのかもしれません。事故が発生した直後に原因究明委員会を立ち上げ、組合員と議論して原因究明を行い、対策を立てることの重要性を改めて認識させられました。運転士は、日々乗務労働の中で路線の状況や沿線の変化、危険な箇所などを感じることができます。こうした経験で培った感性を活かし、事故を未然に防ぐための対策や改善を現場から提起していかなければなりません。
私たちの乗務している線区はローカル線であるために設備投資は削られ、改善が先送りされてしまいます。第4種踏切はまだ多く危険な箇所もあります。この様な踏切の改良は地元自治体の協力等が必要であり、総合交通政策として改善しなければなりません。そのためにも「たしろ かおる」を国政に送り、鉄道の安全を高めていかなければなりません。
今回の事故を議論し学んだことを大事にし、「命」を守るたたかいを継続していきます。これからも全員参加の運動で安全で働きがいのある職場を創り出していきます。