1994年5月26日、また仲間の尊い命が奪われました。
JRバス関東館山営業所のスーパーハイデッカー車(座席は高く見晴らしがよいが、運転台は低い車両)が小型トラックと正面衝突、運転していたJR東労組組合員・岡本さんが亡くなりました。
JR東労組は、事態の重大性・緊急性にかんがみて、原因究明と同型車7台すべての車両の運行停止を求めるなどの緊急対策を会社側に申し入れました。
そして、会社側と何回かの交渉を重ねた結果、スーパーハイデッカー車の運行を全面的に取り止めることを確認しました。
しかし一方では、安全に一抹の不安を感じつつもスーパーハイデッカー車の導入を望んできたのが、組合員自身であったのです。だからこそ、バスの仲間たちはこの事故に真正面から立ち向ったのです。
ITFでバス前面強化の取り組みを報告
国際運輸労連(ITF)第37回大会が1994年8月4日~11日かけてスイス・ジュネーブで開催されました。大会には5ヵ国、陸・海・空の278組織が出席、日本からは12組織、JR総連からは7人の代議員が出席しました。
JR東労組からはバスの事故を契機とした車両構造強化の取り組みに関して、また、憲法9条を守り広める平和の取り組みについて報告しました。
このJR東労組のバス前面強化の取り組み報告はITF「バス構造検討委員会」に役立つものだ、と高く評価されました。
そして、このバス前面強化の取り組みが、やがて世界においても画期的な成果をもたらすのです。
事故絶滅への挑戦-安全宣言
11月8日、JR東日本労使は「事故絶滅への挑戦」を掲げた「安全宣言」を発しました。これは、この間の労使の取り組みによって「責任追及でなく原因究明を第一とする大きな流れ」をつくってきました。しかし、株式上場後の「安堵感」のためか、重大事故の要素をはらんだ事故が相次いで発生しました。宣言は、このような現実を見据え「初心に立ち返って」事故撲滅の決意を新たにしました。
安全宣言
-事故撲滅への挑戦-
JR東日本では、会社発足以来今日まで、安全問題は労使共通の課題であるとの認識のもとに、経営協議会や国際鉄道安全会議等の場を通じ安全について真剣な議論を積み重ねてきた。
そうした中で、事故調査にあたっては責任追及でなく原因究明を第一とする大きな流れをつくり出すとともに、社員の創造力を重視した新たな安全風土をつくり上げてきた。
こうした労使の真剣な取り組みにより、JR東日本の安全性は、この間着実に向上してきたといえる。
しかし、最近、車両・設備のトラブルや取り扱い誤りによる小さな列車遅延が相次いで発生している。この中には重大事故となる要素をはらんだケースも少なからず含まれており、看過することができない事態にある。
こうした事態の背景として、念願であった株式上場が実現したことにより、社内に一種の安堵感が広がっているということがないであろうか。
私たちはこのことに思いを致してみる必要がある。安堵感は安全に対する感性の低下をもたらし、新しい事故の芽を準備しているともいえるからである。
また、安全対策についても、発生した事故・阻害に対して類型的マニュアルや具体性を欠いた対策の作成のみをもってよしとする安易な姿勢になっていないか、今一度反省しなければならない。
事故撲滅のためには、何よりも事実を正確に追求する厳粛な姿勢と人に対する暖かな思いやりが不可欠であり、それを通じて初めて効果的な真の事故防止対策が講ぜられるのである。
私たちは、現状を一つの警鐘として危機感をもってとらえ、より安全で信頼性の高い鉄道をつくりあげていくために、初心に立ち返って事故撲滅に向けての決意を新たにするとともに、その実現に向けて全力を挙げて取り組むものである。
1994年11月8日
東日本旅客鉄道株式会社
東日本旅客鉄道労働組合