1990年、JR東労組の安全哲学の教訓を世界の鉄道労働者に向けて発信する、国際鉄道安全労組会議(10月29日、JR総連主催)、国際鉄道安全会議(10月31日~11月1日、JR東日本労使主催)が開催されました。
これにより、世界の国々がそれぞれの条件と労使の立場を乗り越え、21世紀の鉄道の発展のために議論し、「責任追及から原因究明へ」という安全哲学を共通の価値観とすることができました。
国際鉄道安全労組会議
「労働組合にとっての鉄道の安全」をテーマにした国際鉄道安全労組会議には山岸連合会長のほか連合加盟産別も参加し、世界のレールマンが鉄道の発展と安全について大いに議論が交わされました。それぞれの問題提起は以下の通りです。
「安全管理で事故は減少」 | ブラジル鉄道労組 |
「統計にもとづく信頼の哲学」 | チェコスロバキア鉄道労組 |
「輸送業務は危険な業務」 | イタリア交通運輸連合 |
「施設・環境の整備重視」 | 韓国全国鉄道労組 |
「安全は常に優先課題」 | マレーシア鉄道労組 |
「一人乗務が大きな問題」 | ニュージーランド機関士連盟 |
「CTCへの切替を推進」 | 台湾鉄路工会 |
「専門的研究により予防策」 | ポーランド鉄道労組(連帯) |
「管理者に厳しい責任を」 | ソ連鉄道建設労組 |
「乗客、労働者の立場で」 | トルコ鉄道労組 |
「保健・安全部を設置して」 | ジンバブエ鉄道労組 |
「政党独裁政治の克服を」 | ハンガリー鉄道自由労組 |
「航空産業を教訓にして」 | オーストラリア機関士組合連合 |
「日本のJRを参考に」 | ザンビア鉄道労組 |
「労使一体となり災害を起こさない努力が必要」 | 鉄鋼労連 |
「海難は悲惨で多くの損失をもたらす。航海の安全に取り組む」 | 海員組合 |
「労働災害は個人の責任でなく、作業環境を放置した経営側を指摘しなかった労組の責任」 | 自動車総連 |
「絶対安全はありえない。安全確保には常にチェックとフォローが働いていなくてはならない」 | 電力総連 |
国際鉄道安全会議
世界31ヵ国の鉄道労使が参加し、主催者を代表してJR東日本・山下会長は参加国代表に歓迎の意を表明すると共に国鉄分割・民営化以降のJR東日本の安全対策を紹介し、鉄道輸送にとって安全の確認が最重要課題であることと、この会議を通じて『事故をゼロ』に近づける努力を訴えました。
<この会議の成果を象徴する事象>
国際鉄道安全会議の直前の10月25日、ニュージーランド国鉄で、わずかな不注意がもとで脱線事故を起こした運転士が解雇処分を通告されていました。
しかし、会議に出席していた労使双方の話し合いによって処分の撤回、元職場復帰がはかられ、さらに事故の原因究明のための調査が開始されることになりました。
このように、鉄道の安全とは起こりうる事故を未然に防ぐためには「責任追及から原因究明へ」と転換すべきことを明らかにし、一人の鉄道労働者の職場復帰を勝ち取ったのです。
現在も国際鉄道会議は継続されていますが、「責任追及から原因究明へ」が世界のレールマンの絆を強くし、安全に対する共通の価値観をつくり出したのです。
会議の妨害
JR西日本の経営陣は「安全は経営の問題であり組合には関係ない」として、安全問題を労使で協力して追求するJR東日本の姿勢を批判し、「国際鉄道安全会議に犬・の子一匹出席させるな」と井手副社長(当時)は社内に大号令をかけました。
その結果、会社側だけでなく、JR西労組大松委員長以下も含め、JR西日本労使全員がこの会議の参加をボイコットしたのです。この行動がJRグループの結束とJR総連の団結の亀裂=分裂へとつながっていくのです。