安全への挑戦

JR東労組の安全への取り組みの歴史
-重大事故の発生と事故撲滅宣言-

 JR東日本発足後約1年を経て、重大事故が連続して発生しました。この重大事故は順調にスタートした経営に警鐘を鳴らすものでした。
 国鉄からJRへの移行にあたり、もっとも危惧していたのが安全問題であり、その意味で私たち労働組合の真価が問われることになりました。

<連続して発生した重大事故>
1988年 8月29日
東北線で貨物列車の脱線事故発生
(降雨により道床が流失した状態に列車が進入して脱線転覆)

10月19日
上越線で貨物列車の脱線事故発生
(走行中に列車が分離し脱線転覆)

 このような事故は国鉄時代からも繰り返されましたが、JR東日本発足後のこの種事故は私たちに大きなショックを与えました。特に、危険と感じつつも列車を止めることが出来なかったことは、事故体質が顕在化したものでありました。
なぜならば、職場では1分でも遅れると乗務停止、ボーナスカットという制裁措置が乱発され、列車を遅らせることを罪悪視する職場の風土が生まれていたのです。
当時は、責任追及主義=官僚主義が横行して組合員のプレッシャーとなり危険を感じても列車を止めることが出来なかったのです。
そこで、JR東労組は会社と安全議論を行うと共に安全風土を変えるために「事故撲滅宣言」を発し、各級機関・組合員に「事故や災害が予測される時は躊躇することなく、列車を止めましょう」と訴えました。宣言全文は次の通りです。

-事故撲滅宣言-

 日夜、安全輸送のために努力されている組合員のみなさん!
JR発足以来1年6ヶ月を経過しましたが、皆さんの心血を注いだ安全輸送の取り組みによって、事故発生件数は著しく減少しています。
言うまでもなく、JR東日本にとって安全は何よりも優先すべき課題であり、皆さんの努力は明確になっています。
中央執行委員会は、皆さんの日夜にわたる努力に感謝致します。
組合員の皆さん!
皆さんの努力にもかかわらず、不幸にして東北線、上越線において重大事故が発生してしまいました。
本部は、この事故に対して関係組合員の救援と共に、事故原因の究明を行っているところです。
私たちのめざす事故原因の究明は、二度とこのような事故を発生させないためになされるものです。事故が発生すると、その原因は技術や規定の習熟度や精神論に解消される傾向にあります。しかし、これは単なる一面的な原因究明にしかすぎません。
私たちは、そうではなく、事故の深層に迫り、わが社の体質、職場状況について根本的な検討をすべきだと考えます。
わが社のダイヤは世界に誇れる正確無比なものです。
この正確なダイヤは職場の第一線の仲間たちによって支えられているのです。私たちは、この職場の仲間たちの悩みにしっかりと立って原因を究明します。
対話集会などの中で出されている特徴的な意見は、事故=処分という事故に対する会社の安易な対応がもたらす、重苦しい職場の雰囲気が精神的な圧迫となっているというものです。つまり、30秒、1分の遅れでも事故扱いとされ、乗務停止や処分が出されるという現実があります。
「安全のために列車を躊躇することなく止める」ということができない雰囲気となっています。
私たちはこのような対策のための「対策」とか、当事者の処分によって、問題解決と思いこんでいる会社の体質が問題だと考えます。
すなわち「安全はすべてに優先する」と言いつつも、実際上は列車の正確な運行がどんな場合にも絶対視されるという矛盾した職場状況と、これを助長させている旧国鉄主義的な体質を変えなければなりません。
本部はこのような立場に立って、組合員がのびのびと仕事のできる職場環境をつくり、事故を撲滅するため、会社としっかり協議を行ないます。
組合員のみなさん!
事故や災害が予測される時は躊躇することなく、列車を止めましょう。
仮に何事もなくても列車を止めたことの責任は問われません。JR東労
組が責任を持ちます。
安全第一の精神を貫いて、さらにがんばりましょう。

1988年11月
東日本旅客鉄道労働組合中央執行委員会

 しかし、残念なことにこの宣言を発した1ヶ月後に「東中野駅構内で列車追突事故」が発生してしまったのです。

 以下は、次に続きます。

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